裁判所の歩き方

往路篇

まずは,プランニングから始めます。あらゆる仕事には,Plan(計画),Do(実行),See(検討)が不可欠です。裁判所庁舎視察においても,いかなるルートで,いかなる交通手段で攻めるかが,あらかじめ十分に練り上げられていることが必要です。計画がしっかりしていれば,成功は半分は約束されたようなものです。

所在地調査
至極当たり前のことですが,あらかじめ庁舎の所在地を確認しておきます。この作業は,出発の1週間前には済ませておきたいものです。裁判所の公式サイトには,全国の庁舎の所在地情報と交通手段が地図付きで載っているので大変重宝します。ただ,地図は各庁が独自に作成した略図なので,いささか不安になります。
私はまず,庁舎所在地周辺のGoogleマップを開き,最寄駅からの行程と所要時間を調べます。これに基づいて,徒歩の可否や利用すべき交通機関を検討することになります。
それでは,いよいよ裁判所巡りの旅に出発することにしましょう。
駅周辺案内図
庁舎の最寄駅に着いたら,駅に掲げてある著名施設等を記した周辺案内図で改めてその位置を確認するとよいでしょう。裁判所は三権分立の一翼を担う重要な機関なので必ず明示されています。庁舎の所在地については事前調査を済ませていることがほとんどですが,当初の計画になかった庁舎を訪問することになる場合もないわけではありません。そんなときには,この駅周辺案内図は貴重な情報源になりますし,あらかじめ調べがついている場合であっても,最終チェックの意味を込めて,指差し確認をしたうえで,第一歩を踏み出しましょう。ちなみに,この案内図は「ステーションナビタ」といい,表示灯株式会社が設置しています。
荷預け
訪問先でホテルに宿泊することになっている場合は,原則として,まずは宿に荷物を預けます。宿泊しないときはコインロッカーに預けます。そうして身軽な体勢を整えた上で,訪問に着手するのです。他に観光の予定があっても,まず裁判所を先に片づけるのが基本です。後回しにして時間がなくなってしまうと大変ですからね。
ところで,コインロッカーに預ける場合,費用対効果というものを考慮する必要があります。すなわち,預入の時間と料金(通常は300円)とを比較衡量し,預入の要否を判断しなければなりません。庁舎を訪問するほか特に用件のない土地では,預入の時間は1時間かそこらで足りることも多いので,そんな場合は,あえて大荷物を抱えたまま庁舎訪問を断行することにしています。
なお,小さな町の駅だと,裁判所があるというのにロッカーがないことも珍しくありませんが,観光協会があればそこで預かってくれることも多いので,尋ねてみては如何でしょうか。
徒歩
大半の庁舎は,鉄道駅から徒歩の範囲内(精々20分程度)にありますので,大雨だとか猛暑だとかいう天候上の問題,あるいはどうしても時間のやり繰りが付かないという事情さえなければ,歩いて攻めるのを基本としています。我々の旅は裁判所庁舎さえ見ればそれでよいというものではありません。庁舎を訪れつつ,その道すがら町並みや文化を肌で感じることによってはじめて,その町を旅したと言うことが許されると考えます。
裁判所庁舎は,城下町では城跡の周辺に存立することが多く,観光のついでに気軽に訪れることができるような計らいがされているものです。しかし,中には,主要な観光地から離れたところにあって,観光のみを目的とした場合は決して足を踏み入れないであろうエリアに存在することもないわけではありません。そんなときこそ,一般の観光客ならば知ることのなかったであろう現地の庶民の生活環境を体感できることの意義を存分に感じるのであります。
レンタサイクル
徒歩でのアクセスが困難な場合は,レンタサイクルの利用を検討するとよいでしょう。多少なりとも観光地の要素がある町では,レンタサイクルが用意されていることがあります。貸主は,観光協会であったり,鉄道会社であったり,民間の自転車屋であったりと様々です。
自転車だったら,バスとは違って,町の空気を直接受け止めることができますし,自力でアクセスするという満足感を得ることも可能です。福井地家裁でいえば,敦賀や小浜のように,庁舎が駅からかなり離れている上,観光的な見どころも更に遠いというような場合には打ってつけです。自転車で庁舎に乗り付けるというのもお洒落なものですよ。
バス
庁舎が鉄道駅から概ね徒歩30分を超える場合は,バスを使うことを検討した方がよいでしょう。最寄駅が必ずしも市の中心駅ではない場合がありますので,注意が必要です。最高裁のアクセス情報には書いていないこともありますので,これは自分で地図を確認して発見するしかありません。
ところでそもそも,裁判所の所在地である市町に鉄道が通っておらず,バス移動しか考えられない場合もあります。そのような例が,特に支部や独簡には枚挙にいとまがありません。これらの庁舎も,各地の主要都市に設けられたはずですが,それらは当時における主要都市なので,必ずしも現在のそれとは一致しません。
かくして,鉄道駅で下車後,更にバスへの乗り換えを余儀なくされる庁舎には面倒な思いをさせられますが,それもまた,ぶらり旅の醍醐味です。路線バスには鉄道とはまた異なった味わいがあり,町のど真ん中を貫いて走るという点では,その地域の雰囲気に直に触れることができる利点があります。
レンタカー
これは最後の手段です。とりあえずバスですら行けない庁舎というのはありませんが,到達したはよいが,帰りの便まで3時間待ちなどという場合もあるわけです。見所でもあればいいのですが,時間のつぶしようがないことも珍しくありません。わずかな暇を利用して出張ってきている我々にとって,非常に時間がもったいないことです。そんなときは,いよいよレンタカーの出番です。
レンタカーというのは公共交通機関と違って時間を気にしなくてよく,便利である反面,昼からビールという訳にもいきませんし,事故の不安もあります。旅先の事故ほど救いようのないものはありません。事故とは言わずとも,些細なことで車を傷つけてしまうのも心配です。
したがって,極力レンタカーの使用は避けたいところですが,庁舎視察には効率も考慮する必要があります。特に,北海道の独簡は,廃線により鉄道から遠く離れているところが多く,もちろんバスも頻繁に走っていないので,レンタカーを積極的に利用しましょう。
到着
さて,裁判所があるであろうと想定される地点に近づくと,ある程度大きな街では,法律事務所とか司法書士事務所とかが目立つようになります。司法書士事務所は,法務局付近にあることも多いので,明確な指標とするには不安がありますが,法律事務所は信頼度が高いです。2,3件くらい見かけると,触覚に響いてきます。やがて,お目当ての建物が目に入ると,安堵の溜息をつくのです。

(H30.1.14改稿)